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伊丹十三の「十三」の顔を映す記念館

「お葬式」「マルサの女」「タンポポ」…これら数々の映画監督として知られる故・伊丹十三は、CM作家、商業デザイナー、俳優など、映画監督以外にも多様な活動・仕事を行ってきました。この記念館は、それら伊丹の「十三」の顔を、13のコーナーを設けて展示しています。

伊丹十三は高校時代を愛媛県松山市で過ごました。また、記念館の隣にグループの本社を構える製菓メーカー・一六本舗(ITMグループ)は伊丹十三にテレビCMを依頼し、伊丹のデビュー作「お葬式」から出資し続けてきました。そうした縁で、同社の現社長が伊丹プロダクションの社長を兼任していることも、この記念館がこの地にできた理由でしょう。



建築の特徴

多様な顔を持つ伊丹十三の記念館の設計を手がけたのは、建築家・中村好文(レミングハウス)。中村さんは自ら「イタミスト」というほど、伊丹のエッセイを愛読されてきたそうです。

この記念館で中村さんは、中庭を持つ、四角形の黒い建物を計画しました。正面にエントランス、右側が展示室、奥にカフェ、左側に収蔵庫、といったシンプルで明快な構成です。外壁には焼き杉を用い、渋い表情を見せています。

建物の中に入ると、空間はヒューマンスケールに抑えられています。中庭を取り巻く回廊も、住宅の庭先のような雰囲気があります。

展示方法に数々の工夫が見られるのもこの記念館の特徴のひとつです。抽斗(ひきだし)を引くと展示物が現れたり、パネルをめくって展示を楽しんだりと、建築家が「手作り感」「ローテク感」を意識したデザイン・展示方法がとられています。メンテナンス用の展示裏のスペースも十分にとられているようです。また、入館して手渡される記念館の案内には建築家自らが描いた、記念館の平面イラストが添えられています。



「十三饅頭」「宮本信子館長」

記念館の中には伊丹十三に関する様々な商品を扱うショップがありますが、人気がある商品のひとつが「十三饅頭」。パッケージは記念館の建物をイメージしたものです。また、館長である女優の宮本信子さんが時折来館するなど、ユニークな運営方法にも注目すべきでしょう。このように、建築のみならず、展示や運営などの全てがひとつとなった記念館は、独特の良い雰囲気を獲得しているようです。今後もこの質を持続し、また向上していただければと願わずにはいられません。

建築を巡る人にとっては、伊丹十三の生き様それ自体も興味深く捉えられ、刺激を受けることができるのではないでしょうか。

余談ですが、記念館のすぐ奥にあるのは、建築家・伊東豊雄さんが設計した「ITM松山ビル(1993年)」。この記念館もかつてはこの本社ビルの広い駐車場が占めていました。20年近く前のこの辺りの様子を知る筆者としては、これらの建築があいまって、川沿いのこのあたりの雰囲気もずいぶん良くなったような印象を受けました。



参考文献

「新建築」2007年9月号、p102(新建築社)
「伊丹十三記念館 ガイドブック」(伊丹十三記念館)
ウィキペディア > 伊丹十三記念館

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DATA

伊丹十三記念館 / Itami Juzo Museum

・主要用途:個人記念館
・設計:中村好文/レミングハウス
・所在地:愛媛県松山市東石井1-6-10
・建築面積:723.49m2
・延床面積:860.90m2
・竣工:2007年5月
・階数:地上2階建
・主体構造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
・交通:伊予鉄伊予鉄バス砥部方面行きで約20分、「天山橋」下車徒歩2分。
最寄の地図(Mapion)
・利用案内:
 - 開館時間 10:00~18:00(入館は17:30まで)
 - 休館日 毎週火曜日(祝日の場合は翌日)
 - 入館料 大人800円 高・大学生600円 中・小学生400円
公式ウェブサイト

作成日:2008年1月26日
最終更新日:2011年12月24日
ページは追記・修正があったときに随時更新しています。
文章・写真:ida-10 / blog 中二階から twitter

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